部屋にユリを飾りたくなって花瓶を買った。LIN UTZONがデザインしたROSENDAHL社のもの。最初は少し大きいかなとも思ったが、やはり大降りの花を生けるのには安定しているものがよい。 デザインも気に入っている。一見すると鼎形でプリミティヴだが、マットな質感と熟考を重ねた絶妙なラインは主役である花を十二分に引き立て、調和を失わない。まさにモダン・デザインの粋を感じる。 Simple is the bestというのは一つの思想である。かつてデザインというのは王族、貴族、聖職者、権力者のためにあった。それ故にデザインは常に名声や富を誇示するものとして存在していた。それを覆すのが、モダン・デザインだ。華燭を廃し必要最小限の要素に削り込んでいくことで普遍性を求める思想である。シンプルというのは歴史的にみても複雑さのなかからしか、出てこなかった。パソコンの世界でそれを実践しているのはアップル社のみ、と言ってよい。 引き算の美学。これは音楽にも通じる。最近聴いた、坂本龍一のout of noiseにもそれを感じた。
≈ 29日。今日はサラエボ滞在の実質的な最終日。Holiday InnからRadon Plaza Hotelへ移動しなくてはならない。Holiday Innはどうみてもお客が多いとは言えなかったのに、どうして予約がとれなかったのか判らない。Radon Hotel はサラエボ随一のホテルらしいが、明朝は6時半のZagreb行きに搭乗するため、朝食も食べられない。これは残念である。
一度ホテルに戻り、荷物をたたんでRadon Plaza Hotelにトラムで向かう。地図では3駅目で降りればすぐみえる距離のように思えたが、実はそれは違うようで、乗り合いの別の乗客に訊くと、ずっと先だという。こちらの人は英語ができる・できないに関わらず親切に教えてくれる。本当にありがたい。 移ったホテルは新しく立派なホテルであった。新車のディーラーも入っているビジネスセンターに隣接しており、とてもしゃれた作りになっている。部屋も1万円にしては相当、リッチな気分を味わえるような感じだ。朝5時に出発するということを考えると、かえすがえす惜しい。部屋からは、廃墟となった建物が見えた。砲弾でやられたのだろう。内戦の激しさを想像せずにはいられなかった。