Conversations with Other Women:journal
Hans Canosa監督のConversations with Other Womenを観た。
元夫婦が偶然、結婚パーティで出会って朝を迎えるまでを、彼らの過去の映像を織り交ぜながらデュアル・フレームで表現した対話劇。
ほぼ二人の会話だけで物語が進行していく。ふたりの心の機微が二つの画面を通じて伝わってくるが、これがなかなかいい。次第にどちらかの立場に感情移入するのだろうが、僕はどちらに肩入れすることなく、男性の方がより気持ちに正直かもしれないと思いながら観ていた(これは肩入れか?)。今はお互いにパートナーがいるにもかかわらず、お互いの現在の相手に軽い嫉妬心を感じている。オンナは男の恋人の年齢に、男はオンナが結婚していることにこだわっている。考えてみれば身勝手なものだが、きっとそれが正直な気持ちなのだろう。
この映画のキャッチ・コピーは「男はズルいロマンチスト、女は罪なリアリスト」というものだが、言い得て妙である。この元カップルの不思議というか、不自然なのは、相手の嫌な所や苦い想い出を口にしないこと。別れた夫婦なら、別れに際して相手へ言っておきたかった文句の一つや二つを隠し持っているものだと思われるが、そうした言葉を口にして泥沼になることはない。こうした野暮を避けることで、stylishな演出を心がけているように思われる。お互いの苦々しい思いは、それぞれが噛みしめるだけで自分の中にしまっている。もう少し若ければ爆発したかも知れないが、そこが大人向けの恋愛物語と言われる所以である。だが、彼らの年齢にしては、随分と大人びたものだ、ともいえるが。
別れた相手が自分に思いを残している。なかなかの口説き文句の連発で、オンナはかなりグラリときたはず。こうした状況は女性の自尊心を大いに満足させるであろう。そういう意味で原題こそ男性視点で付けられているようだが、内容的には女性の視点を意識しているように思える。昔の相手と会うことで、今の自分が過去の自分とは違っていることや、もう若くはないことを再認識させられてしまう。それは一つの不安要素なのだが、男からの讃辞や口説き文句でそれが解消されてしまう。男はきっとそれを熟知しているのだろう。男のズルさはここにある。
もちろん、男の方は今の恋人であるSarahとの関係が悪化することが暗示されるし、オンナの方も「どんなに歳をとっても愛し続ける」と言った元夫と現在の夫を比べて、未練を残して苦しむかも知れない。
このカップルの場合だが、人は懐かしさだけで、昔の恋人と寝ることがあるんだな・・・。長じてからの浮気は案外、新しい相手ではなく、昔の相手とするもんじゃないかと思ったりもした。
この映画、観た後に恋愛談義を繰り広げるにはうってつけの一本だ。普段は顕在化しない互いの恋愛観がひょっとして顔を見せるかも知れないし、関係性における好みも思わず吐露してしまうかもしれない。恐らく、こうした恋愛談義は小難しいものにならず、楽しいものになるのであろう。パリで大ヒットしたという理由も首肯できる。
ところでこの映画の編集はFinal Cut Proを使っているようだ。考えてみれば、恐ろしく低予算でこうした楽しめる映画が作れるということだ。しかし、重要なのはやはり脚本なのだろう。邦題は『カンバセーションズ』。
元夫婦が偶然、結婚パーティで出会って朝を迎えるまでを、彼らの過去の映像を織り交ぜながらデュアル・フレームで表現した対話劇。
ほぼ二人の会話だけで物語が進行していく。ふたりの心の機微が二つの画面を通じて伝わってくるが、これがなかなかいい。次第にどちらかの立場に感情移入するのだろうが、僕はどちらに肩入れすることなく、男性の方がより気持ちに正直かもしれないと思いながら観ていた(これは肩入れか?)。今はお互いにパートナーがいるにもかかわらず、お互いの現在の相手に軽い嫉妬心を感じている。オンナは男の恋人の年齢に、男はオンナが結婚していることにこだわっている。考えてみれば身勝手なものだが、きっとそれが正直な気持ちなのだろう。
この映画のキャッチ・コピーは「男はズルいロマンチスト、女は罪なリアリスト」というものだが、言い得て妙である。この元カップルの不思議というか、不自然なのは、相手の嫌な所や苦い想い出を口にしないこと。別れた夫婦なら、別れに際して相手へ言っておきたかった文句の一つや二つを隠し持っているものだと思われるが、そうした言葉を口にして泥沼になることはない。こうした野暮を避けることで、stylishな演出を心がけているように思われる。お互いの苦々しい思いは、それぞれが噛みしめるだけで自分の中にしまっている。もう少し若ければ爆発したかも知れないが、そこが大人向けの恋愛物語と言われる所以である。だが、彼らの年齢にしては、随分と大人びたものだ、ともいえるが。
別れた相手が自分に思いを残している。なかなかの口説き文句の連発で、オンナはかなりグラリときたはず。こうした状況は女性の自尊心を大いに満足させるであろう。そういう意味で原題こそ男性視点で付けられているようだが、内容的には女性の視点を意識しているように思える。昔の相手と会うことで、今の自分が過去の自分とは違っていることや、もう若くはないことを再認識させられてしまう。それは一つの不安要素なのだが、男からの讃辞や口説き文句でそれが解消されてしまう。男はきっとそれを熟知しているのだろう。男のズルさはここにある。
もちろん、男の方は今の恋人であるSarahとの関係が悪化することが暗示されるし、オンナの方も「どんなに歳をとっても愛し続ける」と言った元夫と現在の夫を比べて、未練を残して苦しむかも知れない。
このカップルの場合だが、人は懐かしさだけで、昔の恋人と寝ることがあるんだな・・・。長じてからの浮気は案外、新しい相手ではなく、昔の相手とするもんじゃないかと思ったりもした。
この映画、観た後に恋愛談義を繰り広げるにはうってつけの一本だ。普段は顕在化しない互いの恋愛観がひょっとして顔を見せるかも知れないし、関係性における好みも思わず吐露してしまうかもしれない。恐らく、こうした恋愛談義は小難しいものにならず、楽しいものになるのであろう。パリで大ヒットしたという理由も首肯できる。
ところでこの映画の編集はFinal Cut Proを使っているようだ。考えてみれば、恐ろしく低予算でこうした楽しめる映画が作れるということだ。しかし、重要なのはやはり脚本なのだろう。邦題は『カンバセーションズ』。