VOLVER:films
Pedro Almodóvar監督のVOLVERを観た。
失職してしまった夫と娘を育てるために一人家庭を切り盛りするRaimunda。ある夜、娘は父親から性的関係を迫られたことで、父親を刺殺してしまう。娘をかばうために必至に隠蔽を謀っているときに、伯母の訃報が舞い込む。夫が娘に迫った上に、伯母を孤独の中で死なせてしまったという思いがRaimundaを打ちのめすのだが・・・。
強風のなか墓みがきをする女性たちの姿。冒頭のカットから溢れるセンスを感じさせた。それがラストのカットに至るまで、落ちないのだから凄い。
クライマックスには何故母親が生きているにもかかわらず自分たちから去ってしまったのか、どうして戻ってきたのか、Raimundaの知られざる過去などが明らかになる。夫とその愛人を殺してしまった母、レイプされて実の父親の子供を産んでしまったRaimunda、父親を殺してしまった娘。三代の女たちはそれぞれの十字架を背負いながらも力強く生きていく。母娘の和解も見逃せない大きなテーマだ。
この物語には「社会」がない。つまり人が殺されても、失踪しても、事件が起きても、警察など男たちによって作り上げられた「社会」が彼女たちの世界には浸食してこない。愛情と親しみに満ちた女の世界で彼女たちは生きている。しかし、ただ女の世界に守られているだけではない。印象的だったのはRaimundaの母が身を隠しながら姉の面倒をみたり、自分が殺してしまった愛人の娘で末期癌に犯されてしまった女性の介護をする姿。刑務所に入るような男仕立ての世間的な罪滅ぼしではなく、人に尽くすことで贖罪を果たそうとしているようである。
この映画に出てくる男たちは一様に存在感が希薄で、ろくでもないのであるが、登場する女性たちはそれにもめげず、したたかに生きていく。彼女たちに起こったことは重い痛みを伴うものばかりなのだが、男たちをアテにしなくても、私たちは大丈夫!と高らかに宣言するような、清々しさが残る。
ペネロペ・クルスの美しい肝っ玉母ちゃんぶりは堂に入っていたし、女優として年齢を重ねてより円熟味を増していることを感じさせた。それ以外の配役の演技も素晴らしく、みんなキッチリとキャラが立っていた。昼ドラのサスペンス的な音楽とクスッと笑わせる台詞回しはアルモドバル作品の真骨頂。お薦め。邦題は『ボルベール<帰郷>』。
失職してしまった夫と娘を育てるために一人家庭を切り盛りするRaimunda。ある夜、娘は父親から性的関係を迫られたことで、父親を刺殺してしまう。娘をかばうために必至に隠蔽を謀っているときに、伯母の訃報が舞い込む。夫が娘に迫った上に、伯母を孤独の中で死なせてしまったという思いがRaimundaを打ちのめすのだが・・・。
強風のなか墓みがきをする女性たちの姿。冒頭のカットから溢れるセンスを感じさせた。それがラストのカットに至るまで、落ちないのだから凄い。
クライマックスには何故母親が生きているにもかかわらず自分たちから去ってしまったのか、どうして戻ってきたのか、Raimundaの知られざる過去などが明らかになる。夫とその愛人を殺してしまった母、レイプされて実の父親の子供を産んでしまったRaimunda、父親を殺してしまった娘。三代の女たちはそれぞれの十字架を背負いながらも力強く生きていく。母娘の和解も見逃せない大きなテーマだ。
この物語には「社会」がない。つまり人が殺されても、失踪しても、事件が起きても、警察など男たちによって作り上げられた「社会」が彼女たちの世界には浸食してこない。愛情と親しみに満ちた女の世界で彼女たちは生きている。しかし、ただ女の世界に守られているだけではない。印象的だったのはRaimundaの母が身を隠しながら姉の面倒をみたり、自分が殺してしまった愛人の娘で末期癌に犯されてしまった女性の介護をする姿。刑務所に入るような男仕立ての世間的な罪滅ぼしではなく、人に尽くすことで贖罪を果たそうとしているようである。
この映画に出てくる男たちは一様に存在感が希薄で、ろくでもないのであるが、登場する女性たちはそれにもめげず、したたかに生きていく。彼女たちに起こったことは重い痛みを伴うものばかりなのだが、男たちをアテにしなくても、私たちは大丈夫!と高らかに宣言するような、清々しさが残る。
ペネロペ・クルスの美しい肝っ玉母ちゃんぶりは堂に入っていたし、女優として年齢を重ねてより円熟味を増していることを感じさせた。それ以外の配役の演技も素晴らしく、みんなキッチリとキャラが立っていた。昼ドラのサスペンス的な音楽とクスッと笑わせる台詞回しはアルモドバル作品の真骨頂。お薦め。邦題は『ボルベール<帰郷>』。