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13 janvier 2007 

INSIDE MAN:films

Spike Lee監督のINSIDE MANを観た。
4人の銀行強盗グループが、白昼のマンハッタン信託銀行に押し入る。グループは自分たちと同じ服装を人質に着せ、銀行に立てこもる。NY市警のフレイジャーは事件の解決すべく、犯人たちと交渉するが、なかなか埒が明かない。一方で銀行会長は女性弁護士を事件現場に遣わし、独自にフレイジャーたちに接触するが・・・。
 ハリウッドの銀行強盗モノだし、ありきたりのテイストを予想していたが、いい意味で裏切られた。逆にこの映画で典型的な犯罪ものを期待した向きは少々物足りない思いをしたかもしれない。僕は安易でありがちなカタルシスを演出するものよりは、観客に歴史的な経緯や犯人グループの思いなどを想像させ、かつ社会のありようを切り取ってみせるこうした手法の方が断然すぐれていると思う。ナチスの戦争犯罪やそれに荷担して財をなした人々がいるということ、また現在の戦争でもこれと同じことが繰り返されていることに敏感な人々にとっては数少ない説明でも多くの事柄が伝わるのだろう。
 殺されたユダヤ人の多くの財産は、ナチスだけでなくユダヤ人が住んでいた地域の「一般市民」もゆきわたった。Gerard Jugnot監督の『バティニョールおじさん』でも、医師だったユダヤ人一家が連行された後に、密告をした一家が何の良心の呵責もなくそのアパートに移り住むというシーンがあった。規模の大小はあるものの、こうしたことはフランスだけでなく、ポーランド、イタリア、ヨーロッパ全域でおこっている。また『ザ・コーポレーション』ではユダヤ人強制収容所の捕虜管理のためにIBMがパンチカードを作ることで協力し、これにより企業業績を上げたことや、コカ・コーラ社がナチスのためにファンタオレンジを開発したことなどが暴露されていた。こうした過去の過ちが現在も道義的な問題として残っているが、銀行強盗を扱ったサスペンスでこのテーマが扱われるとは驚きであった。またNYを舞台にしていることもあり、エスニシティの描き方も監督の視点がふんだんに盛り込まれていてこうした点でも楽しめた作品。