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05 janvier 2007 

Crimson Gold:films

Jafar PANAHI監督の"TALAYE SORGH"を観た。
どこにでもいるようなピザの配達員フセインが宝石商に強盗に押し入り、店主を殺害して自害に至るまでを淡々と、リアリスティックに描いた作品。
 フセインはもとから性格が凶暴だとか、悪事をはたらいていたわけではない。日常をみているとむしろど彼は無口でおとなしい方である。仕事ぶりも悪いという訳ではなく、職場の人々だけでなく、社長からさえも好かれている。そして、親友の妹との結婚も間近に控えている。本当はとても幸せなはずなのに彼の表情には笑顔は殆どみられない。喫茶店でお茶を飲んでいれば泥棒家業と間違われるし、高級宝石店では入店さえも拒絶されてしまう。次に正装をして同じ店に入るがやはり慇懃にもっと安いバザールで買うようにと追い出されてしまう。フセインは外見だけ取り繕っても越えられない障壁が存在していることを肌身で感じるのだ。また、ビルの4Fにあるピザを届けに行くだけなのに、逮捕の妨害になるからと軍や警察から逆に仕事の妨害をされてしまう。どちらも同じ「職業」なのに軍や警察の仕事が自分たちの仕事より優先されてしまう。ここでも自分が劣位にいることを否応なく思い知らされる。やがて周囲から泥棒か強盗のように思われていくうちに実際に強盗をはたらくようになってしまう。
 この映画で見逃してはならないのは、フセインの経歴であろう。劇中でさりげなく言及されるが、フセインが重度の閉所恐怖症であること、治療薬の影響で以前とは見違えるほどに太ってしまったこと、通信兵として戦争に従軍していたこと・・・彼には常に戦争の影が付きまとっている(時代的にはイラン・イラク戦争か)。そして、そうした彼の境遇や苦労とは全く無縁で、仕事もしてない男がフセインがどうあがいても手に入れることができない贅沢な暮らしを享受している(プール付の桁外れに豪奢なアパートが凄い)。フセインはピザの配達という仕事を通して、こうした圧倒的格差の上位にいる者たちの生活ぶりに接してしまうことになる。イラン社会の圧倒的な経済格差と社会格差がフセインを犯罪へと囲い込んでいってしまうのだ。
 昔から貧富の格差は確かに存在した。しかし、今の世界の趨勢としてはその格差をなるべくフラットにして、底上げをしていこうという方向へは向かっていない。権力や経済のヒエラルヒーのトップにいる者たちが自らの利権をさらに拡大し、強固なものにしていこうとしているのが現状である。これが日本やアメリカだけの傾向ではないことに愕然とする。脚本はAbbas Kiarostami。邦題はクリムゾン・ゴールド。