La Vie de Matsuko:journal
中島哲也監督の『嫌われ松子の一生』を観た。中学校の教師をしていた松子が波瀾万丈、紆余曲折の人生を経て荒川の川辺で撲殺されるまでを描いた作品。山田宗樹の同名小説の映画化だが、随分とテイストは変わっている。ミュージカル映画とも言える作品。小説のストーリーをカラフルでポップな映像で一通り繋げたような作品で、日本版Dancer in the darkとも言える一本。
松子の心象風景はミュージカル仕立ての映像になる点はLars von TrierのDancer in the darkを意識した作りになっている。Dancer in the darkのミュージカル・シーンはSelmaが精神的に追いつめられた極限状態になった時点で明るい映像とともにSelmaの心象風景として切り替わる。映画の『嫌われ松子の一生』は原作の読者からすると随分と飛躍したテイストになっているが、監督からすれば松子の一生とSelmaの一生に一つの共通点を見いだしたのだろう。何かのインタビューで歌をうたうシーンが彼女に黙って吹き替えに置き換わっていたことを中谷美紀はコメントしていたが、よほど悔しかったのだろう。松子が歌をうたうシーンは彼女が幸せの絶頂期にある時を示す重要なシーンだったので、彼女がプライドを傷つけられるのも無理はない、と思った。ビョークとの差は歴然だからだ。
小説では松子の甥に当たる大学生が松子の人生を調べてストーリーが展開していく、いわば狂言回しの役割を果たすが、この映画では殆ど関与していない。原作では甥がもがき苦しみながら生きた松子の人生を知っていくうちに、小さな精神的成長を果たすという物語になっている。
しかしながら、松子という女、つくづく男運が悪い。というか非道い男ばかり選んでしまう。というか、極めて自己評価が低く、自分を安売りしてしまう。自分を少しでも愛してくれる男に尽くし、依存してしまう。原作では唯一松子が幸せになる可能性があった男はソープランドの社長だったが、そのエピソードは映画では軽く扱われ、殆ど触れられない。総合的に考えれば、原作の方が映画よりも遙かによくできている。映画は恐らくスゲー、お金がかかっているんだけどね・・・。
