C'EST QUOI LA VIE?:films
François Dupeyron監督のC'EST QUOI LA VIE?を観た。南仏の田舎町で酪農を営む一家。その長男であるNicolasは仕事も恋愛も中途半端。一家もどことなく暗く、食事の時もけんかが絶えない。ある日、一家が飼っていた牛にBSEが発生し、全ての牛に処分命令が下される。経営にも行き詰まり借金を重ねていた父親は首つり自殺。祖父はショックで(?)痴呆状態になってしまう。一家を支えなくてはいけない立場になったNicolasは思いつきで事業を始めるが、車の保険未加入、寝坊など些細なことで挫折してしまう。父の死後、一家はバラバラ。「これが人生?」「何のために生きているのか?」といった状態が続く。行き詰まった一家は町はずれの田舎に引越をし、そこから一から人生をやりなおす。これは一人の甘ったれた農家の男が一人前になるまでの成長物語である。Nicolasは軽い都会生活への憧れを、地に足をつけた田舎での仕事の充実感に変えていく。派手なシーンもなく、淡々と描くが、大自然を背景にした再生の物語は深い感銘をもたらす。家族の戦いも見逃してはならない。
作品では二度、仔牛の出産と朝日のシーンがあるが、観客はNicolasの成長をはっきりと実感する。一仕事おえたときに観る自然の美しさは何者にも代え難い(仕事のあとのビールもそうだが)。大自然と農業に携わる人々への敬意が感じられる一本である。
この映画、フランスの田舎の風景が本当に美しく撮れている。特に朝日の美しさといったら格別である。全編を覆うカーキ色がかった映像はフランスの農民画家・Milletの名画「種をまく人」や「落ち穂拾い」を思わせるようなテイストである。映画のテーマ性から、Milletの画風を映像作りに盛り込んだのかもしれない。ちなみにカメラは日本のテツオ・ナガタ、フランスで活躍するカメラマンである。
農業をやっていくことは過酷である。脱サラして農業をする都会生活者の話を耳にするが、サラリーマンをやっていた人間が簡単にできるような甘いものではないのだろう。フランス映画といえばパリを舞台にした作品がまっさきに浮かぶが、こうした第一次産業に従事する人々を描いた作品も思いの外、多い。それはフランスが欧州最大の農業国であることを思えば納得できることかもしれない。フランスではSalon du chocolatなどの展示会もやっていたが、Salon International de l'Agriculture(国際農業見本市)などもテレビ中継していた。美食の国を支える基幹産業でもあるので当然といえば当然だが、日本ではこうしたことはあまり考えられない。フランス人はよくバカンスに出かけるが、観光地を回るものではなく、田舎でゆったりと過ごすことが多い。自然に触れ合う機会を日本よりはずっと大切にしている印象だ。 監督は『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』の監督。この作品も素晴らしい。原題は「人生って何?」の意。邦題は『うつくしい人生』
