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03 octobre 2006 

FLANDRES:films

Bruno DUMONT監督のFLANDRESを観た。
ベルギーのフランドル地方の田舎町。あまり肥沃とはいえない農村風景が広がる長閑で閑散とした地域。農民であるDemesterは幼なじみのBarbeに思いを寄せ、肉体関係ももっているが、彼女はDemesterをそれほどまでに思ってはいない。Demesterは農閑期に戦地に赴くことになり、二人は離ればなれになるが・・・。
 先のカンヌ映画祭でGrand Prixを獲得した作品である。監督の作品としてはL'humanitéに続いての受賞になる。彼の作品は台詞が少なく、難解であるというある先入観があったので、この作品も「覚悟」をして観た。この映画にあるのは、「演出された美しさや醜さ」ではなく、ありのままの、あからさまなおぞましさである。映画である以上、脚色もあるし、編集作業もある。しかし、この作品はそうしたギミックを排除して、生々しいまでの「現実」を描いている。特に性描写や戦争を描くシーンは過激に流れているわけではないのに、正視に耐えがたい気持ちにさせる。それは戦争のシーンに顕著な違いをみせる。近年、特に日本で上映されている感動仕立てだったり、美談仕立てだったり、正当化だったりするような映画の対極にある。この作品のなかでおとなしい青年が軍事訓練や戦場での経験を通じてレイプや強盗や人殺しも厭わない「兵士」になっていく。戦争は結局は空腹を抱えながら糞尿にまみれ、仲間が目の前で無惨な姿で死んでいく恐怖や流血の痛みを抱えながら固い地面での野宿を強いられるものでしかないことを物語る。当たり前だが、飲まず食わずで何日もシャワーなど浴びることなどできない。こうした戦争のリアリティを感じることなくして、戦闘行為を正当化することこそ「平和ボケ」だと思える。
 大切な誰かを守るための戦争。近年の戦争を描く作品にありがちな設定であるが、一方のBarbeの方は戦地に赴いた男を待ってなどいない。ましてや貞節を守るなどという観念は及びもしない。銃後のチアガールなど皆無だ。そこにあるのは退屈で鬱屈した日常と孤独だけである。この映画でもそうだが、これといった産業がない貧しい地域から兵士が調達されるというのは世界的に共通している問題だ。職にありつくため、生活を支えるため、大学進学の費用を捻出するため、除隊後の有利な立場にありつくため・・・現実は美学や美談で覆い隠せない状況にある。日本ではどうなのだろう?
ただ言えるのは戦地に飛ばされる可能性が極めて高くなった昨今、自衛隊に社会的コネクションのある子弟や学歴エリートがこぞって入りたがるところではないだろう。
 この作品はまだ日本で公開が決まっていない。公開されてもヒットは望めないだろう。美男や美女、ヒーローやヒロインも出るわけでもなく、音楽もない。一切の虚飾を拝して淡々と描かれるシーンに陰鬱な気分になってしまうが、観ておくべき作品だ。カンヌのGrand Prix作という肩書きがなければ日本で公開されることはないだろう。この作品が受賞に値するかは別にして、そうした点で映画祭の受賞というのは意味があると思う。