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09 décembre 2006 

L'annulaire:films

 Diane Bertrand監督のL'annulaireを観た。工場での事故で薬指の一部を失ったIrisは工場を辞めて標本準備のアシスタントの仕事に就くが・・・。
 フランスの寂れた建物のなかでおこる奇妙な体験を描いた寓話。工場の事故で薬指を傷つけ、喪失感を抱えて職探しをするうちに、Irisはミステリアスな標本技師に出会う。男は彼女にぴったりの靴をIrisにはかせ、Irisは次第に彼の虜になっていく。しかし、Irisは嫉妬という名の牢獄に幽閉されてしまう。技師とIrisの二人のシーンは「匂い立つような官能」という言葉をそのまま映像にしたように耽美。このラブシーンは秀逸。このシーンを観るだけでも劇場に足を運ぶ価値がある。ラストに彼女は彼からもらった靴を脱ぎ捨てて新たな扉を開く。彼女が幽閉された状況から自分の足で歩き始めることの暗喩である。この物語が現実から浮遊している感じがするのは、物語や映像だけではない。登場人物たちのフランス語が徹底して敬意表現を使用しているからだ。二人の物理的な距離は圧倒されそうなほど近いのに、言葉は丁寧さを失わない。これが独特の雰囲気を醸し出している。
 この映画は現実的に考えればツッコミどころ満載である。しかし、そんなことは耽美に描くことに終始しているこの映画には無意味である。またこの映画は何故か多国籍である。原作は日本の小川洋子、主演のIrisはウクライナ出身、ホテルの管理人はドイツ人、部屋をシェアする男もドイツ人(『ベルリン僕らの革命』に主演していた)。とくにイタリア語でIrisを褒める管理人役は『カフカ、映画に行く』の著者であるHanns Zischler。脇役に至るまで存在感抜群である。
 上映後、この映画についてのトークショーがあった。映画に関するコメントはトークショーの企画が無意味なほどに早々に切り上げられ、殆ど劇場の宣伝のような内容になってしまったのは残念である。邦題は『薬指の標本』(原題は「薬指」の意。)