« Home | Macchina Espresso:journal » | C'est vraie, l'enquête?:journal » | nine lives:films » | Le Passager de l'été:films » | TSOTSI:films » | Bashing:films » | une mimique italienne:journal » | LITTLE MISS SUNSHINE:films » | BREAKFAST ON PLUTO:films » | Chantez, s'il vous plaît. » 

01 octobre 2006 

DIE HOELE DES GELBEN HUNDES:films

Byambasuren Davaa監督のDIE HOELE DES GELBEN HUNDESを観た。
 モンゴルの大草原に暮らす遊牧民一家の物語。両親と小さな妹、弟と遊牧生活を送る少女・ナンサ。彼女はある日、岩の割れ目で子犬を見つけて連れて帰ってくる。しかし、犬を家で飼うことで家畜でもあり、生活の糧である羊が狼によって襲われることを懸念する父は、ナンサが犬を飼うことを認めない。父が遠出しているのをいいことにナンサは犬を飼い続けるが・・・。
 黒沢清はどう考えても「ドキュメンタリーとフィクションの境目はない」という。これはこの言葉どおりの作品である。物語はモンゴルのゆったりとした時間の流れのように進むが、圧倒的な生活感を見せつけられる。例えば、馬の糞は燃料であり、子どもたちの遊び道具でもある。子どもも「小さな大人」として家業を手伝っている。今の自分の生活とは対極にある生活にこれが同じ時代を生きている人間なのかさえ信じられないほどである。家電製品に囲まれながらも、忙しく立ち働かなくてはいけない現代社会。石油と電気がなければ一日たりとも立ちゆかなくなってしまう都会の生活。我々は彼らが生活する自然の中ではきっとどうしようもなく無力な存在なのだろう。この作品では遊牧生活と政治というテーマもさりげなく織り込まれている。街から帰ってきた父が政治なんて判らないといい、ラストに選挙への投票を呼びかける車が一家のキャラバンの横を空しく通りすぎる。彼らの生活に政治は無関係なのだろうか?いやそうではないだろう。しかし、実際の政治とはかなり遠い、影響の少ない生活を送っていることは確かであろう。これはグローバルな富の分配闘争のなかで、争わずにはいられない国々への強烈なアンチテーゼのように思えてならない。
 しかし、この映画はそんなことを考えなくても楽しめる作品なのかもしれない。ナンサをはじめとする子どもたちの喜怒哀楽が僕を十分に満たしてくれた。母親や祖母がナンサに語るささやかな格言も含蓄がある。難しいことを考えずに観るのがいいかも知れない。
 ドイツ語原題は「黄色い犬の洞窟」という意。邦題は『天空の草原のナンサ』。