転々:films
三木聡監督監督の『転々』を観た。84万円もの借金を抱えてしまった文哉は、返済期日が迫ったことで借金取りの福原に脅される。ある日、福原は文哉に100万円の謝礼を払う代わりに、一緒に東京中を歩き回ることを提案する。文哉は不審に思うも、お金のために付き合うことに・・・。
福原が文哉を選んだのは、彼がNoとは言えないことに加え、親に棄てられた不運や困窮に同情したからなのかも知れない。福原は嫉妬のあまり、愛していたはずの妻を撲殺してしまった。だが、周りは彼にとてもやさしく、なぜか映画をみている我々も福原を憎めない。文哉の返済期日に間に合うように警視庁に向かったのは、福原の気遣いだったのかも知れない。
土地勘のある場所が舞台になっている映画では、現実では考えられないような距離をワープしていることが多い。そうしたシーンに気づくと、裏切られたような気分になる。その土地の感覚を無視して、風景をつまみ食いをされたような気になる。この作品は二人の後ろ姿を追いながら、素の東京をみせる。きっと実際に歩ける距離なのだろう。秋から冬に入る季節を選んだのは、福原のこれからの人生を重ねたものか。
飛行機や新幹線に乗り、遠くに行くばかりが旅行ではない。飛行機は飛行機の、歩行は歩行の風景がある。文学散歩ならぬ、映画散歩でもしたくなる作品だ。
時間を気にせず、歩きながら話をする。人生を振り返り、懐かしい場所に思いを馳せる。多忙な日常が常態化した昨今では、案外難しいことなのかも知れない。老夫婦が一緒にやりたいことにウォーキングを挙げるのも、わかるような気がする。
