NORTH COUNTRY
Niki Caro監督のNORTH COUNTRYを観た。DV夫から逃れて実家のあるミネソタに帰ってきたJoseyは二人の子供を養うために働きに出る。そこは炭坑。これまでの給料の6倍が支払われるが、厳然たる男社会。そこでは女性への悪質極まりないハラスメントが待ち受けていた。
Joseyは他人に依存することなく、自分で稼ぎ、子供を養うことに「生きている」という実感を得た。そうだ、働くということはこういうことなのだ。自ら立つことで、本当の自由と生きる実感を与えてくれるのが働くということなのだ。特に、財産もコネもない人間にとっては、働くということは極めて重要な意味をもつ。しかし、Joseyは職場で個人の尊厳も踏みにじられる。これは働くこと=生きることを否定されるのと同じ意味をもつ。働くことに女も男もないのである。炭坑に働く男性従業員が何より恐れるのは自分が男性性の欠如した人間であるとの烙印を押されることである。女性を虐待することで男性性を守ろうとする行為が如何に愚かで、醜く、浅ましいものかはこの映画を観ればよく分かる。
この映画はアメリカにおいて最初のセクシュアル・ハラスメント訴訟で勝利した実話に基づいた作品である。今日的な観点からすれば、この映画で繰り広げられる女性たちへの執拗な虐待と迫害は誰の目から見ても違法である。露骨な性的な言葉による罵倒、簡易トイレに入っている時に倒されて糞まみれにされ、さらに糞で壁一面に悪質な落書きをされ、人気のないところで暴行される・・・これだけのことがありながら、この裁判が決して簡単でなかったことをみると、当時の働く女性が置かれた環境が如何にひどかったかが分かる。この裁判が今日の法的枠組みをつくる契機となったのだから、今日における重要性が改めて認識されるであろう。しかし、日本における職場の環境はまだ、理想的なものとは到底いえない。
Charlize Theronの演技も素晴らしかったが、脇を固めるFrances McDormandやSean Beanもよかった。邦題は『スタンド・アップ』。
