La Sconosciuta:films
Giuseppe Tornatore監督のLa Sconosciutaを観た。ウクライナからやってきた美しい女性Irena。彼女は極めて周到に、時には危ない橋を渡りつつ何とかしてAdakel一家の家政婦になるよう画策する。そして、ようやくその念願がかなうが・・・。
サスペンスとしては非常によくできた作品。時折、Irenaのflashbackによって彼女の身に起こったことが示されるが、それが明らかになった時はその悲惨さ、過酷さに驚いた。劇中のIrenaという女性はヨーロッパの暗部を一身に背負ったような存在だ。東欧諸国から西欧に売られてくる娼婦の問題、養子ビジネスの問題、国家間の格差の問題、移民の問題・・・。『セックス・トラフィック』や『リリア・フォーエバー』でも描かれたように、今も東欧の女性が西欧で性労働に従事させられるという現実がある。これに加えて、養子が多いヨーロッパやアメリカでは養子仲介がビジネスとして成立するという事情がある。当然、クリーンなものばかりではないのであろう。映画で描かれているような方法が実際に行われているのかは判らないが、あり得るかもしれないと思わせる社会状況がヨーロッパには、ある。監督にラストは言うなと口止めされているので、これ以上は言えない。
それにしても「黒カビ」と言われる男の演技はド迫力だ。劇中では「どうして黒カビと呼ばれるのか」という問いに対する答えはないが、観ていれば判る。どれだけ消そうとしてもビッシリ根を張るカビのようになかなか離れない。やややりすぎの感もあったが、分かりやすい刺激に慣れた向きには受けるであろう。
最後にTornatore監督について、一言。『マレーナ』以降、約6年のブランクの後に本作を発表したのであるが、この監督はもう『ニュー・シネマ・パラダイス』を撮った頃には戻れないことを、確信した。今回は社会派的なスタイルを出したかったのだろうが、それは成功しているとは言い難い。それは致し方ないことである。残念ではあるが。
邦題は「題名のない子守唄」。この題名からEnnio Morriconeの音楽を全面に出して内容の激しさをオブラートに包みたいという配給側の作為が見え隠れする。原題は「不遇な女」とでも訳せばいいのだろうか。
