SECUESTRO EXPRESS:films
Jonathan Jakubowicz監督のSECUESTRO EXPRESSを観た。猥雑で犯罪まみれのヴェネズエラの首都・カラカスを舞台に、チンピラ誘拐グループに狙われてしまったカップルの行く末を描く。強烈な危険性と暴力性を発散しながら、物語はスピーディに進んでいく。いつ殺されてもおかしくない状況で連れ回されるカップルの恐怖と絶望はいかほどだろう。しかも、被害女性はとりたててお金持ちでもなく、施設でボランティアをしている女性。彼女は生命の危険にさらされるだけでなく、結婚を約束した彼との仲も最悪の状況を迎えてしまう。
日本では一般に誘拐と銀行強盗は成功率の極めて低い犯罪であると認識されているが、かの国では事情が違うようである。原題のSECUESTRO EXPRESSとは「短時間誘拐犯罪」を示す言葉で、エクアドルで社会問題にもなるほど頻発しているようである。身代金を素早く調達させて人質を数時間で開放するというものだが、この映画も実際に起こった事件を再現しているので、Michael HANEKE監督のFUNNY GAMESに匹敵するような嫌悪感がずーっと付きまとう。犯罪者だけでなく、警官までも腐っている。賄賂でコカインを受け取って検問を通してしまう警官や誘拐保護を装って拉致をしようとする警官。何の救いもない現実を突きつけられる。こんな街に生まれたら、人生観は全く違うモノになるだろう。
犯人グループが金持ちに向ける嫌悪と憎悪の眼差しに戦慄を覚える。この憎悪の根底には圧倒的な貧富の差と底辺に生まれた人間が立身出世することがおよそ不可能な現実がびっしりと根付いているのだろう。一体、どういう経緯でこのような危険社会が生まれてしまったのだろうか、考えずにはいられない。
この映画をみるとカラカスは観光気分で足を踏み入れるような場所ではないように思ってしまう。実際にカラカスは各国が危険情報を出しているようで、いつ事件に巻き込まれてもおかしくない。よっぽどのことでもない限り、足を向けたくない。それほどの恐怖感を植え付けるような監督の力量はなかなかのもの。邦題は『ベネズエラ・サバイバル』。
