Frere Mamiya:films
森田芳光監督の『間宮兄弟』を観た。兄はビール工場で働くサラリーマン、弟は小学校の校務員。二人仲良く過ごす兄弟の日常と小さな恋を描いた作品。ほのぼのした仲の良い兄弟の姿に癒される人も多いのではないかと思うし、実際にそれを狙っている。しかし、ちょっと考えるとこの兄弟はかなりアブノーマルである。休日は一緒に出かけ、椅子を並べてビデオを観て、一緒に銭湯に行き、一日の終わりには布団を並べて「反省会」をする。兄弟は漂白されたように清潔で、人畜無害な存在。そんな彼らをとりまく、パートナーとの関係に満足していない美女たち。
この物語は原作が女性によって書かれているためか、癒されたい女性の観客の視線を強烈に意識した作品となっている。よって二人の兄弟は女性によって極めて都合の良いキャラクターとなっている(これは母親にとってさえも極めて都合の良い兄弟である)。休日に肩の凝らない食事を振る舞ってくれて、ほのぼのとしたゲームに興じる。会話も相手の実存を脅かすようなものではなく、決して自分に踏み込んでこない。この兄弟は女性を癒すことはあっても傷つけたりするような存在として描かれることは、決してない。それはあたかもペットのように。
彼らの奇妙さは「絶対的に人畜無害でなければならない存在」であることから一歩も出ることができないことに由来する。物語では描かれていなかったが、どちらかに彼女ができた時、兄弟の関係はどうなるのだろう?親密な兄弟の間に女性が入っていけずに早晩逃げ出してしまうと思うが、兄弟の関係の破綻を招く可能性を排除することで、この物語は成立している。それはあたかも寅さんの恋が成就しないことで『男はつらいよ』が成り立っていることと同じである。
仲のいい兄弟の物語がこのように成立するなら、仲の良い男女のカップルのほのぼのした物語もあってもいい。しかし、案外にそうした物語が少ないのは、一般にそうしたカップルは閉じた関係になりがちだからであろう。外からみて閉じた関係のカップルが周りを癒すというシチュエーションはなかなか考えにくい。
