Charlie Wilson's War:films
Mike Nichols監督のCharlie Wilson's Warを観た。一人のテキサス出身の下院議員が、ソ連のアフガニスタン侵攻を阻止した実話に基づく。もちろんこの田舎政治家が思慮なく行ったことは、歴史的にみれば、とんでもない誤りの一つであった。
この映画は、911から現在に至るまでの世界情勢を「込み」で観る必要がある。1980年代、軽い気持ちでアフガニスタンへの秘密費を倍額し、さらには地元の富豪夫人の「陳情」で、アフガニスタンを訪れ、義憤に駆られて空前規模の軍事費とありとあらゆる大量破壊兵器を秘密裏にアフガニスタンに供与する。映画を観る限り、Wilson議員は中東情勢に知悉しているとは言えず、彼自身も、自らが下した一つ一つの決断の悪影響について、驚くほど、関心を払わない。後に彼が行ったことが、ビン・ラディンを育て、911を招いてしまうことなど、もちろん、知るよしもない。「無邪気な地獄への使者」、とでも言えばいいだろうか。軍事費を増やし、性能のいい武器を大量に売りつけることで、莫大な数の人間が死んでしまうことへの想像力が、彼にはひとかけらもない。Wilson議員がイスラエルの武器商人の友人に忠言されるシーンがある。「大人なら学んだらどうだ。道を渡るときには両側をみよ」と。
この作品が、Wilson議員の実像をどの程度精確に描いていたのかは判然としないが、畢竟、世界を方向付けてしまうのは、良くも悪くも政治家であることを強く印象づける。今日的にみれば、Wilson議員がやったことは偉業でもなんでもない。映画における彼への賛美は、皮肉以外の何者でもない。監督は徹頭徹尾、そのように描いている。この作品は、アメリカ政治の暴露話とも言える。
日本においても、どうしてこんな人が議員をやっているんだろうと不思議に思うことは多い。議員とは言わずとも、何故あんな人が管理職をしているのか、と身近なところで感じることは多いのではないだろうか?こうした人のなかには、自らの職権による決定がどのような影響を及ぼし、いかなる不都合を生じさせるのかについて、殆ど頓着しない者も多い。恐ろしいことである。特に日本の場合、年功の「年」の部分によって管理職になる人が極めて多いので、なおさらである。
ラスト。莫大な軍事費には金を支出する国が、それにくらべるとずっと少額の学校建設費をケチる場面がある。しかも、アフガニスタンとパキスタンを間違えて。あの国の金の使い方と中東理解への強烈な皮肉だ。まあ、そうだろう。日本が土建業を主な公共事業とするなら、アメリカは軍需産業がそれに当たるのだから。
地獄への道は善意で舗装されている、か・・・。
