ANGEL:films
François Ozon監督のANGELを観た。19世紀から20世紀のイギリスを舞台に、しがない食料品店の娘Angelが作家として成功し、自分が求めるもの全てを手に入れるも、没落していく姿を描く。
女性の視点による華々しくも残酷な物語を自らの空想から紡ぎだし、Angelは女性の読者を獲得して文壇の寵児となる。彼女の物語の「美しさ」は日本で言うなら少女マンガやハーレクインの物語の世界に近いのだろう。そして、彼女は昔から憧れた屋敷The Paradiseでの生活を始める。彼女の身につける衣装や家具などの調度品は、洗練とはほど遠い俗悪そのもの。しかし、彼女は愛する男性との結婚も手に入れ、幸せな毎日を送る。
しかし、その生活は長続きしない。母親の死によって、自らの出自を美しいものにしたり、夫が自分から去り、自殺した原因も、やはり自分の都合のよい形にねじ曲げていく。その姿は滑稽とさえ言える。
人はある程度の年齢に達すれば、そうした理想の生活や偽りの人生に別れを告げ、現実に着地していくのであるが、彼女はいつまでも虚構で塗り固めた世界にしがみつく。その姿が哀れだが、そうした彼女の弱さに共感する女性は案外多いのかも知れない。映画の映像は彼女の危うい虚構の世界のように、故意に安っぽい演出にしているようであった。特に夫がAngelを描いた肖像画、その彼女の本性を見抜いたような醜さが印象的である。夫が思いを寄せていた相手と対決するシーン、二人の衣装の対比が凄い。皮肉たっぷりな演出ぶりである。
しかし、僕たちは彼女を嘲えない。なぜなら人はどうしても美しい虚構に魅了されてしまうものなのである。彼女の場合は、豪奢で愛に満ちた生活であったが、人によっては伝統のある美しい国だったり、全てを圧倒する権力を持った強い自分だったり、過去においても未来においても無垢な自分だったりする。過去を偽り、美しい物語にしがみつく姿は、Angelのように滑稽で、哀しい。
