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24 août 2008 

Vers le Sud:films

Laurent Cantet監督のVers le sud を観た。
 1970年代末のハイチ。アメリカ人のBrendaはバカンスで一人、この島にやってくる。彼女はかつて夫と訪れた時に関係をもった現地の男・Legbaとの再会を夢見てやってきた。そして、ほどなくLegbaに再会するも、彼はEllenという女性に呼ばれて立ち去ってしまう。そこには金やプレゼントで
ハイチの若い男を買いあさる女たちのグループができていた・・・。
 圧倒的な経済格差を背景に「先進国」の女たちが、ハイチの若い男をハーレムよろしく侍らせる。彼女たちはみな、40代、50代。自国では女として満たされない日々を送っているが、ハイチでの男遊びで空虚な心を埋め合わせている。女たちは、若くしなやかな肉体をもち従順で逆らうことのない男たちにアディクトし、生を燃え上がらせている。グループのボス的存在のEllenは、ボストンの大学でフランス文学を講じている。寝たい男と寝る、一体それの何が悪いと開き直っている。しかし、完全に遊びとは割り切れずに、自分の男が他の女に目を向ければ嫉妬もするし、内心は怒りに震える。Legbaを取り合うBrendaとEllenの駆け引きは、この作品の一つのみどころとなっている。時折、Ellenは嘲笑まじりでBrendaを謗るが、それは自分に向けられた言葉でもある。
 Ellenはハイチを「パラダイス」と言うが、軍事独裁体制がしかれていた当時、住民にとっては圧政と貧困、重犯罪がはびこる暗黒時代であった。冒頭で母親が15歳の娘をホテルの従業員Albertに引き取ってもらおうと必死に懇願するシーンや、時折映し出される地元住民が住む街の風景、簡単に人が殺されるシーンなどから、澄んだ海と眩しい太陽から連想する南の島とは全く異なったハイチの現実がリゾート地の周りに広がっていることがわかる。そうした時代がBrenda、Ellen、Legbaの関係に影を落とす。警察官が「観光客は死ぬことはない」という台詞がEllenたちとLegbaの置かれた現実を如実に示している。
 BrendaやEllenは年齢は重ねているものの見かけは美人である。だが本国では男に見向きもされず、「女の価値」としては蔑視の対象とさえなっている。Brendaは結婚経験があるにもかかわらず、Legbaとのセックスで45にして初めてオルガズムを味わったという。彼女たちのやっていることは、日本の男性が東南アジアの国々でやっていることと同様、おぞましい。映画を観ていくうちに、そのおぞましさの背後にある彼女たちの根深い問題が見え隠れする。
 ある朝、Legbaは幼なじみの女の子とともにビーチに死体となって発見される。その前夜、Ellenと口論していたことを警察は知っているにもかかわらず、警察は少しもEllenを疑わない。自分が執着していたLegbaとの関係が、第三者には九牛の一毛のごとく映っていたという事実は、Ellenにとってはこの上ない屈辱である。彼女がLegbaとの関係で得たものは虚しさだけ。逆にBrendaは新たな「植民地」を開拓するが如く、南に向かう船に乗る。
 この映画、Ellen演じるCharlotte Ramplingの演技が凄い。邦題は『南へ向かう女たち 』。原題は「南へ」の意。
 同監督の最新作、Entre mursが今年度のカンヌ映画祭でPalme d'Orを獲得した。日本公開が楽しみである。