I AM DAVID:films
Paul Feig監督のI AM DAVIDを観た。第二次世界大戦直後のブルガリア。物心ついた頃から収容所で生活するDavid。ある夜、看守の一人の指南で脱出をはかる。そして、一路デンマークを目指すのだが・・・。映画化は難しい小説だと思っていたが、果たしてその予想どおりのできであった。原作でのDavidは収容所で一級の知識人から多くの言語を学んだ結果、イ タリア語、フランス語、ドイツ語、英語を話し、彼のイタリア語は富 裕なイタリアの婦人をして「フィレンツェの貴族も真っ青」と言わしめるほどであった。そして、彼の言葉がある時は彼を助け、ある時は彼への疑念を強める ことになっていた。しかし、この映画では全編、英語。また、小説ではモノローグで語られているため表情に乏しい彼であっても内面世界は極めて起伏の激しいものであったことが分かるが、映画では彼を客体としてみる視線を半ば強制されるため彼の聡明さや内面を推し量ることは難しい。何より大切なのは、多くの困難に見舞われながらも旅を通じてDavidは自然の美しさに感動する心や人を愛すること、信頼すること、そして人を自分に危害を加えた人をも許す心を獲得していく。しかし、映画ではそれを十分に表現できてはいない。唯一映画にエクスキューズを与えるなら、映画でのDavidの方がある意味では現実の存在に近いのであろうが、総じて旅の途中での彼の内面の成長を示す多くの事柄が平坦に描かれていたようである。あと、スイスでDavidがあっさり飛行機に乗ってしまうのはいかがなものだろうか。原作が随分と損なわれたようで、残念である。
この作品はもともと児童文学として書かれているので、小説の一読をお薦めする。
