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05 août 2007 

Je ne suis pas là pour être aimé:films

Stéphane Brizé監督のJe ne suis pas là pour être aiméを観た。
 51歳の法務執行官、つまり家賃滞納者に取り立てや家財の差し押さえをするような職業にある、Jean=Claudeは妻に去られ、週末にそりの合わない父親を見舞う、孤独な日々を送っている。息子が自分の事務所に入ってきたが、息子はそれほど楽しそうではない。そんなある日、Jean=Claudeは事務所の向かいにあるタンゴ教室に通うようになる。そこで、妻が面倒をみていたという女性Francoiseと出会う。
 フランス版のShall we dance?とも言える作品だが、コメディ色は薄く、人生に疲れた男の哀愁と結婚を前に戸惑う女性の心情を中心にした大人のラブストーリーとなっている。
 この作品はどちらかといえばJean=Claudeの方に細かい描写が施されている。父との関係というのは、息子にとっては良くも悪しくも軽いものではない。この親子3代は、互いに言いたいことも言えない、似た者親子である。孫の父親に接する態度は、かつてのJean=Claudeの父への態度を容易に連想させるようなものとなっている。また息子に愛情を示すことができない父親の態度も、Jean=Claudeと息子の間では相似の関係にある。父親が息子が勝ち取ったトロフィーを後生大事にとっておきながら、息子には捨ててしまったと嘘をついていたことが、父の死後、明らかになる。息子に素直に愛情を表現できない不器用で不自由な父親の心情を雄弁に物語って、極めて感慨深い。
 Jean=Claudeが買った香水の名前が"Rose des sables"というのはふるっている。まさにFrancoiseはJean=Claudeにとっては「砂漠の薔薇」。もちろん、薔薇といえばフランスでは誰もがエディット・ピアフのLa vie en Rose(バラ色の人生)を想起する。これを狙ってこの香水の名前が付けられている。こうした名前の香水が存在するのかは知らないが。
 結局、Francoiseは婚約を破棄したのだろうか?ラストは観客の想像に任されている。きっと結婚前に迷うのは女性ばかりではないだろうが、Francoiseの婚約者についてはやや無頓着な描かれ方になっているし、そういうキャラの俳優が選ばれている。登場人物の殆どが不器用な性格の持ち主であるだけに、妙に浮き立った印象だった(笑)
 タンゴの調べは大人の恋に合うのであろう。成熟した男女とタンゴをからませた映画は結構、多いような気がする。Robert Duvall監督の"Assassination Tango"やCarlos Saura監督の"Tango, no me dejes nunca"など。タンゴには忘れかけていた何かを蘇らせるものがあるのだろうか・・・きっと音楽だけの力ではないのかもしれない。原題は「愛されるためにここにいるんじゃない」だが、邦題は真逆の「愛されるために、ここにいる」。作品ではつい裏腹なことを言ってしまう大人の複雑な心境が描かれているが、この邦題になるとそうした機微がでないんだけどな・・・。