Hula Girls:journal
李相日監督の『フラガール』を観た。石炭から石油へのエネルギー政策(本当は原子力なんだろうけどこの点は隠蔽されている?)によって次第に人員が削減されている炭坑の町・常磐。ここで町の産業の活性化のために温泉リゾート地の構想が持ち上がる。そこでフラダンスを踊るためのチームが募集され、東京から講師がやってくるが・・・。
これは日本版Billy Elliot(邦題『リトル・ダンサー』)、あるいは日本版『ブラス!』のような趣。いずれもさびれた炭坑町を舞台にした作品で、『フラガール』でも明らかにこれらを下敷きにしたと思われる点もあった。特に寺島純子が娘の踊る姿を観て黙ってホールを去るシーンやその後の行動の変化はまさにBilly Elliotの本歌取り。また登場人物が必死に努力をしている姿を殆どストーリーに入れていないのに最後は上手な演技で盛り上げる点は『スゥイング・ガール』のようだった。
やや不自然なカットがあった。早苗の貧乏加減は極端だろうと思った。解雇されたとはいえ、30年も働いた一家があそこまで貧窮しているのは他の家の状況と比較するとおかしい。最初は松雪の台詞が怒鳴ってばかりだったし、「フラガール!」と突然一人で叫びだす女の子が3秒以上も上を向いて三白眼にして直立していたのはいかがなものか。松雪の踊りも短いカットを多用して上手に見えるように編集されていた一方で、3ヶ月しか練習していないはずの蒼井優の踊りのほうがずっと上手であった。蒼井優はバレーの素養があり、岩井俊二の『花とアリス』では長い長いダンスを披露していたので、結末は読めてしまっていたが、蒼井は流石の踊りであった。しかし、背の高いしずちゃんが前列で踊るという配置はいかがなものか。舞台からみたバランスや遠近法を考えると、やはりおかしいと思う。
人の生き死にを感動仕立てにする手法はあまり好きではないが、感動を誘う場面も多かった。あまりにベタな手法が多用されている感もあったが、一般向けとしては成功しているといえよう。しずちゃんの演技はよく見積もって中の下。
一時期に比べると海外旅行が気軽に行けるようになった昨今、場違いな場所に海外の風景を模したようなテーマパークができることには大きな抵抗があるだろう(例えばカリブ海に日本村のようなテーマパークがあったらそれは不気味だろう!)。しかし、この映画の時代にはハワイというのが庶民のあこがれとして輝きを放っていたということがよく判る。海外旅行への敷居が今のように低くなかった時代のハワイ(これも沖縄同様に作られた観光地のイメージ戦略によるものだったが)への憧れが反映されていたのだろう。今でも形をかえて舞台となったリゾート地があるという。行ってみたい気にもなった。
