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22 mars 2006 

L'enfant: films

 Jean-Pierre Dardenne, Luc Dardenne監督のL'enfantを観た。
 20歳のBrunoと18歳のSoniaの間に息子のJimmyが生まれる。しかし、Brunoは定職につかず年下の子供と盗みをはたらく毎日。赤ちゃんを散歩に出しても赤ちゃんをダシに通行人に小銭をせびる始末。赤ちゃんに使わなければいけないお金も服や煙草に消えてしまう。ある時、養子に出すとお金が得られることを知った彼はSoniaに黙ってJimmyと引き替えに多額のお金を得る。それにショックを受けたSoniaをみてJimmyを取り戻すが、逆に養子エージェントに金を脅されて借金を負ってしまう・・・。
 邦題は「ある子供」だが、原題はL'enfantと定冠詞が使われている。最初は赤ちゃんのJimmyをいっているのかと思ったが、映画をみていくうちに父親であるBrunoのことを指していることが分かる。彼は性行為が10ヶ月後に自分の人生を一変させるなんて想像だにしておらず、父親という自覚も子供への愛情も抱けないでいる。行動もなりゆき任せ。こんな男性はBrunoだけではないだろう。また男と暮らすBrunoの母親も自分の孫に一目会いたいとさえ思っていない様子である。さりげなく世代間での不幸の連鎖を印象づけるシーンだ。ラストにBrunoはどうしようもない自分に会いに来てくれたSoniaとの再会に感極まって涙を流すが、それから彼が態度を改めると希望的な観測をするのは早計だろう。
 この映画は大人になることの困難を描く。この映画を見終わったあと、「大人になるとは?」という問いで、自分のこと、学生のこと、今話題になっている若者のこと、日本や他の国の社会のこと、様々なことを考えた。しかし、どれも漠として考えがまとまらない。自分がいつ、どのように大人になったのかさえ、よく分からない。大学で学生と接していると、学生であるうちは「子供」の特権を手放さないでおこうとする若者が一般的であるように思う。高額な授業料や低賃金のバイト、車や携帯電話、洋服や化粧品にかかるお金は経済的に親から自立することを困難にしているように見える。
 ふと思う。今の未成年にとって、法律的に成人に達することはトクなのだろうか?お酒は?煙草は?選挙権は?国民年金は?もちろん、この問いは意味をなさない。生きていれば成人する/しないの選択権はないのだから。しかし、成人に達することは避けられないが、大人になることからは逃げていられる。
 映画『エトワール』のあるダンサーは「エトワールに昇格しても自分が急に成長する訳ではないし、欠点は残されたまま。しかし、責任だけが大きくなる。それは簡単なことではない。」という旨のことを言っていた。「エトワール」に「大人」を代入しても事情に大差はない。どれだけ未熟であっても、より重い責任が求められる。昨日の自分とはなにも変わっていないのに・・・。
 僕が成人した時に「これからは悪いことをしたら新聞に顔が載るから」と言われた。成人式には多くの言葉を聞いたが、実はそれ以外のことは思い出せない。それはともかくとして、ある時期から誰にも依存せず、迷惑をかけず生きていきたいと思った。弱くて自立していない自分が他人に迷惑をかけることを恐れていた。結果的に自立は僕に自由を与えてくれた。自らの責任を引き受ける覚悟をもつことで、自分の望むように人生を選択できるようになった。誰に気兼ねすることなく自分のことを決められる自由。これは何物にも替え難い。しかし、それは結果的にそうなった、という性質のもので、自立(=非依存)と自由の関係が最初から念頭にあったものではない。
 随分と脇道にそれた。この映画はとにかく、観る者に多くのことを語りかけ、考えさせる。監督の主観を訴えるのではなく、そっと物語るように映像をつなげていく。主演が Jérémie Renierということで同監督のLa Promesseの延長上にあるような趣である。Brunoにしても徹底的に悪者として描くのではなく、彼、ひいては若者へのへのやさしいまなざしを感じる。この二人の監督の視線は厳しく、温かく、やさしさに満ちた真の大人のものだ。監督の人間的な大きさを感じさせる作品である。同監督のRosettaは自立しようと必死にもがく女の子を描いた作品で、L'enfantとはコインの裏表の関係にある素晴らしい作品だ(この作品もPalme d'Orを獲得)。併せてご覧になることをお薦めする。