Kauas Pilvet Karkaavat:films
Aki Kaurismäki監督のKauas Pilvet Karkaavatを観た。市内電車の運転手Lauri、そしてレストランで給仕長をするIlona。二人は共働きで倹しい生活を送る夫婦。しかし、不況のあおりで運悪く二人は失業してしまう。しかし、ソファや本棚、SONYのカラーテレビのローンも残っている。何とか仕事を見つけようとするが、やることなすことみんな裏目に出てしまう・・・。
カウリスマキのいわゆる「敗者三部作」の一作目。テーマは「働くこと」なのだろう。登場人物はどこか無表情。しかし、二人はどんな苦境でも相手をなじったりはしない。無口ながらも二人の夫婦の間に交わされる労りや思いやりは、観客によく伝わってくる。
働くことは人生に不可欠な生活の基盤である。二人が求める仕事には、日本の若者が口にする「自分に合った仕事」や「やりがいのある仕事」、また「どんな仕事がしたいか分かりません」といった文脈で使われる仕事とは全く異なる意味をもつ。二人は職探しのプロセスで、何度も何度も不愉快で、理不尽な思いをする。とても不運で、不器用で、見ていて同情を禁じ得なくなる。しかし、最後にはそんな二人に幸運がやってくる。きっと「やりがい」とか、「楽して儲ける」とか、「自分を高める」とかそんな言葉で仕事を形容する者たちには、決して訪れない幸運なのだろう。リスクがあっても仕事をまかせられるのは、まさに地味だが彼らのような人たちなのかもしれない。
この映画には、多くの場面で赤と青が多用される。監督はこの二つの色に強い拘りを見せる。ラストのシーンで、何とかやっていけるかも知れないという予感と、充実感をにじませながら、夫婦は空を見上げる。恐らく、二人の目には爽やかな青空と白い雲が広がっていただろう。しかし、監督は敢えてその色を画面に切り取らない。このあたりが心憎い。邦題は『浮き雲』
