いつか読書する日:journal
緒方明監督の『いつか読書する日』を観た。50代の男女の若かりし頃からの純愛物語。こうした映画が成立するのも冬ソナ効果か?それはともかくとして、田中裕子は不思議な女優だ。読書が好きで、文才があるが、毎日、一人の人を密かに思いながらまじめに地味に生活する女性を演じていたが、静かな存在感がある。彼女の少女時代は別の女優が演じていたが、田中裕子の表情から少女時代の彼女の様子が容易に想像できてしまう。最後に彼女が不吉な予感に導かれて人が溺れたという川まで走って行くシーンがある。彼女の走る姿に感銘をうけた。ここで下手な走り方をしたら、何十年も牛乳配達をしているという設定が崩壊してしまう。フォームの上でも、演技の上でもバランスのとれた走り方だった。この映画は彼女の演技力と魅力で支えられている。そう言っても過言ではない。しかし、人は好きだった一人の人の思い出だけで生きていけるのだろうか?最後のシーンでは書棚の蔵書のカットがあった。妙に純文学が多く、やや不自然な印象を受けたのは僕だけか?
僕は坂の多い町が好きだ。尾道、函館、リスボン、モン・サン・ミッシェル、そしてこの映画の舞台となった長崎。坂の途中で立ちどまり、しばし風景を楽しむ。そして、またのぼっては一息をつく。旅先でゆったりとした時間を過ごすのが好きだ。この映画は小高い場所にたって眺めた風景を思い出すような映画だった。
